インターネットで光免疫療法について調べると、保険が使えると書かれたページと、全額自己負担だと書かれたページの両方が見つかります。どちらかが誤っているわけではありません。
同じ「光免疫療法」という呼び名で、成り立ちも対象も異なる2つの治療が並んで説明されているためです。この記事では、その2つをどう見分けるかを軸に、対象になるがん、治療の流れ、副作用と長期エビデンスの現状までを順に整理していきます。
光免疫療法とは何か

光免疫療法とは、光に反応する物質(光感受性物質)をあらかじめがん細胞に集めておき、そこへ特定の波長の光を当てて、がん細胞を選択的に壊す治療の総称です。手術、放射線療法、化学療法、免疫療法に続く「第5のがん治療法」という呼び名で紹介されることもあります。
使われる光は主に近赤外線です。赤い光よりも波長が長く、肉眼では見えません。体の組織を比較的通り抜けやすいという性質があり、照射のときに熱さや痛みを伴わないのが一般的な特徴とされています。
もう1つの柱は、名前に含まれている「免疫」の部分です。がん細胞が壊れると、その中身ががん特有の目印として周囲に放出されます。
免疫細胞がそれを手がかりにがんを認識し直す働きが期待されており、この点が単なる局所治療と区別される理由になります。
名前は同じでも中身が異なる2つの光免疫療法

日本で光免疫療法と呼ばれているものには、保険診療として行われるアルミノックス治療と、当院を含むクリニックが自由診療として行う光免疫療法の2つがあります。使う薬剤も、対象となるがんも、治療の場所も別のものです。
保険診療として行われるアルミノックス治療
1つ目は、2020年9月に切除不能な頭頸部がんに対する治療として国内で承認された治療で、アルミノックス治療と呼ばれています。
がん細胞の表面にあらわれるEGFRというたんぱく質に結合する抗体薬と、光感受性色素IR700を結びつけた薬剤を点滴し、波長690㎚のレーザー光を病巣に当てる方法です。
薬剤名はアキャルックス、一般名はセツキシマブ サロタロカンナトリウムです。関西医科大学附属病院の案内によれば、入院1日目に2時間以上かけて点滴し、投与の20時間から28時間後にレーザー光を照射します。効果が不十分な場合は、4週間以上の間隔を空けて最大4回まで繰り返せる仕組みです。
保険が適用されるのは「切除不能な局所進行又は局所再発の頭頸部癌」に限られます。高額療養費制度を使った場合のひと月の負担額は10万円程度と見込まれると同院は案内しており、頸動脈にがんが広がっている方は出血のリスクから対象外となります。
自由診療として行われる光免疫療法
2つ目が、当院のようなクリニックが自由診療として提供している光免疫療法です。抗体薬を使わず、別の方法でがん細胞に光感受性物質を集める設計であり、対象とするがんの範囲も、通院で行う点も先ほどの治療とは異なります。
ここで大切なのは、承認された治療の実績が、そのまま自由診療の治療の裏づけになるわけではないという点です。名前が同じでも別の治療ですので、ページを読むときは「どちらの話なのか」をまず確かめてください。判断の目印は、薬剤名がアキャルックスかどうか、対象が頭頸部がんに限られているかどうかの2点になります。
当院で行う光免疫療法の仕組み

当院の光免疫療法は、ICG(インドシアニングリーン)をベースにした物質を特殊加工し、およそ100㎚の大きさにリポソーム化した光感受性物質を点滴で投与する方法をとっています。リポソームとは、薬を包み込む微小なカプセルのようなものだと考えてください。
がん組織の血管は正常な血管に比べて隙間が多く、リンパによる排出も働きにくいため、一定の大きさの粒子がとどまりやすいことが知られています。この現象はEPR効果と呼ばれ、1986年に報告されました。
当院はこの性質を利用して光感受性物質をがん組織へ集めています。
当院の設計で特徴的なのは、体の外から光を当てる照射と、血管内に光を届ける血管内照射を同時に行う点です。血液の中を流れているがん細胞は末梢血循環腫瘍細胞(CTC)と呼ばれ、転移の種になると考えられています。血管内照射は、この血中のがん細胞にも働きかけることをねらったものです。
なお、ICGは体内で代謝されずに時間とともに排出されます。隔離や遮光のための入院は必要なく、治療は外来通院で行う形です。
未承認医薬品等に関する記載
当院の治療では、国内で承認されていない医薬品等を使用します。次の5点を必ずご確認のうえでご検討ください。
- 本治療で使用する未承認医薬品等は、医薬品医療機器等法上の承認を得ていないもの
- 日本では医師の責任において使用が可能なもの
- 国内承認医薬品等で同一の性能を持つ他の医薬品は現在なし
- 諸外国における安全性等に係る情報は現在なし
- 自由診療(全額自己負担)であり、医薬品副作用被害救済制度の対象外
使用する薬剤や照射の設定など、当院の治療内容はサービスページで詳しくご案内しております。
がん光免疫療法の治療内容はこちら対象になるがんと対象にならないがん

当院の光免疫療法が対象とするのは、固形がんと呼ばれるかたまりを作るタイプのがんです。ステージや再発、転移の有無にかかわらずご相談いただけますが、対象にならないがんもはっきりしています。
対象としているのは、頭頸部(喉頭、咽頭、口腔、甲状腺、舌)、胸部(肺、小細胞肺、乳)、消化器(食道、胃、大腸)、肝胆膵(肝臓、胆管、膵臓)、泌尿器(腎臓、膀胱、前立腺)、女性特有のがん(子宮頸、子宮体、卵巣)、皮膚やメラノーマ、原発不明がんなどです。
一方、脳腫瘍と血液腫瘍は原則として対象外になります。脳には血液脳関門という仕組みがあり、光は届いても薬剤のほうが病巣に届きにくいためです。白血病や悪性リンパ腫のように血液やリンパの細胞から生じるがんは、光を当てる標的となるかたまりを作らないため、この治療の設計に合いません。
ただし脳腫瘍については、手術の後や放射線治療の後に血液脳関門が破綻し、薬剤が届くようになる場合があります。その状態であれば有効な選択肢になり得ますので、治療歴を伺ったうえで個別にご相談させてください。
治療の流れと回数の考え方
当院の治療は外来通院で完結します。光感受性物質の投与は治療日の前日または前々日に30分程度、治療日の照射は1時間程度です。独自の免疫サポートを加える形を選んだ場合は、当日の所要時間が2時間ほどになります。
入院施設は設けておらず、治療後に隔離や遮光のために病室で過ごしていただく必要もありません。仕事や生活のリズムを大きく変えずに続けられる点を重視した組み立てになっています。
回数については、状況に応じた目安を設けています。寛解の状態で経過観察をされている方であれば年1回程度、手術の予定がある方は術前2回と術後1回の計3回、腫瘍が取り切れていない場合は6回という考え方です。効果の評価は6回を1セットとして、そのセットが終わってから行います。
副作用とリスク、長期エビデンスの現状
当院の治療でも副作用は起こり得ます。稀ではありますが、点滴部位の皮下血腫、悪心や嘔気、発熱、血管痛が生じることがあり、アレルギー反応やアナフィラキシーショックの可能性も否定できません。光線過敏症の報告もあります。
効果なし、やめたほうがいいと言われる背景
光免疫療法を検索すると、「効果なし」「やめたほうがいい」といった言葉も目に入ってくるはずです。この背景には、いくつかの事情が重なっています。
1つ目は、先ほど整理した2種類の治療が混同されている点です。保険診療のアルミノックス治療は対象が頭頸部がんに限られており、条件を満たさなかった方の落胆がそのまま「効果がない」という言葉になることがあります。
2つ目は、自由診療で行われる光免疫療法について、長期間にわたる大規模な比較試験の結果がまだ十分に蓄積されていないという事実です。当院もその現状を認識しており、治療効果を数値でお約束することはいたしません。効果のあらわれ方には個人差があり、すべての方に同じ結果が生じるわけではありません。
当院の院長の見解
当院の院長は、大学病院で子どものがん治療を専門としてきた医師です。診療の場で繰り返し感じてきたのは、同じ治療を行っても、患者様の栄養状態と免疫の状態によって経過が変わってくるという点でした。
そのため当院では、治療そのものの回数や設定だけでなく、食事がとれているか、体重が保てているかといった全身の状態を含めて相談するようにしています。光を当てることだけで完結する治療だとは考えていません。
標準治療との併用の考え方
当院の光免疫療法は、標準治療の代わりに受けるものではなく、標準治療と並行して選べる選択肢として位置づけています。手術、放射線療法、化学療法、免疫チェックポイント阻害薬のいずれとも併用が可能です。
免疫チェックポイント阻害薬は、がんが免疫にかけているブレーキを外す薬で、体の中の免疫の働き方そのものに作用します。一方で光免疫療法は、光を当てた部位のがん細胞を物理的に壊すところから始まる治療であり、出発点が異なります。
実務面でご不安が多いのは、通院中の病院との調整でしょう。当院では、抗がん剤の投与スケジュールや検査の予定を伺ったうえで、現在の治療の妨げにならないように日程を組んでいます。他院での治療経過をお持ちの方の相談や診察も承っており、紹介状は不要です。
まずは現在の診断名と治療の経過を伺うところから始めさせてください。
治療や検査のご相談はこちらから自由診療であることと費用の骨子
当院は自由診療のみを行っており、保険診療は受けられません。光免疫療法の費用は全額自己負担となり、料金は1回66万円(税込)からとなっています。独自の免疫サポートを加えた形はこれとは別の設定です。
がんカウンセリングは60分2万2千円(税込、初診料を含む)で、光免疫療法のお支払いは現金または銀行振込に対応しています。回数ごとの料金や検査費用を含めた一覧は料金表のページをご覧ください。
料金表はこちらよくある質問
光免疫療法について、当院に多く寄せられるご質問をまとめました。
光免疫療法は保険適用されますか
保険が適用されるのは、アキャルックスを用いるアルミノックス治療で、対象は切除不能な局所進行または局所再発の頭頸部がんに限られます。当院を含む自由診療の光免疫療法は保険の対象外で、全額自己負担となります。
光免疫療法はどのがんが対象ですか
保険診療では頭頸部がんのみが対象です。当院の自由診療では、肺、乳、食道、胃、大腸、肝臓、胆管、膵臓、腎臓、膀胱、前立腺、子宮、卵巣、皮膚など、かたまりを作るタイプのがんを幅広く対象としています。
光免疫療法は効果がないと聞きましたが本当ですか
効果のあらわれ方には個人差があり、どなたにも同じ結果が生じるとはお伝えできません。自由診療の光免疫療法については長期の比較試験の蓄積が十分ではなく、その点を含めてご説明したうえで判断していただいています。
光免疫療法に入院は必要ですか
保険診療のアルミノックス治療は入院で行われます。当院の治療は外来通院で、投与が30分程度、照射が1時間程度です。治療後に遮光のため病室で過ごしていただく必要もありません。
抗がん剤や放射線と併用できますか
併用は可能です。手術、放射線療法、化学療法、免疫チェックポイント阻害薬と組み合わせていただけます。通院中の病院のスケジュールを伺い、現在の治療の妨げにならないように日程を調整しております。
脳腫瘍や白血病でも受けられますか
脳腫瘍は原則として対象外で、血液脳関門があるために薬剤が病巣に届きにくいという事情があります。光そのものは届きます。
ただし手術の後や放射線治療の後は血液脳関門が破綻し、薬剤が届くようになる場合がありますので、治療歴を含めてご相談ください。白血病などの血液腫瘍は、光を当てる標的となるかたまりを作らないため対象になりません。
東京がん検査・治療ラボラトリーへのご相談
当院は渋谷駅から徒歩約5分の場所にあり、年中無休で診療しております。標準治療が難しいと言われた方、転移や再発が心配な方、標準治療との併用を検討されている方から多くご相談をいただいています。
治療を急ぐ必要はありません。まずは現在の状況を整理するところから、医学博士である院長が直接お話を伺います。
東京がん検査・治療ラボラトリーのWEB予約はこちらから参考文献
- 国立がん研究センター東病院「光免疫療法について」 https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/clinic/endoscopy/060/index.html
- 関西医科大学附属病院 光免疫療法センター https://hp.kmu.ac.jp/treatment/departments/photoimmunotherapy/
- Kobayashi H, Choyke PL. Near-Infrared Photoimmunotherapy of Cancer. Accounts of Chemical Research. 2019;52(8):2332-2339. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31335117/
- Matsumura Y, Maeda H. A new concept for macromolecular therapeutics in cancer chemotherapy. Cancer Research. 1986;46(12):6387-6392. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/2946403/
- 国立がん研究センター がん情報サービス https://ganjoho.jp/
- 厚生労働省「医療広告ガイドラインに関するQ&A」 https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000644622.pdf



















