直腸とは
直腸(ちょくちょう)は、大腸の一番下の部分で、S状結腸の次に位置し、肛門へとつながっています。便を一時的にため、排便のタイミングを調整する重要な役割を持っています。直腸の壁は粘膜・筋肉・漿膜の層でできており、粘膜表面の細胞が長期間にわたって傷つくと、がんが発生しやすくなります。
直腸がんとは
直腸がんは、直腸の粘膜にある細胞が異常に増えて発生する悪性腫瘍です。大腸がんの約3〜4割を占め、日本では年間約15万人が新たに診断されています。男女ともに増加傾向にあり、特に40〜70代で多く見られます。早期に見つかれば内視鏡で切除可能ですが、進行すると周囲臓器(膀胱・前立腺・子宮など)へ広がることもあります。
主な原因・リスク
直腸がんの主な原因は生活習慣と遺伝的要因です。
赤肉や加工肉の多い食生活、食物繊維の不足、肥満、運動不足、喫煙、過度の飲酒などがリスクを高めます。
また、家族に大腸がんのある方や、遺伝性大腸がん(家族性大腸腺腫症、リンチ症候群)を持つ方も注意が必要です。
慢性的な炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎など)も発症リスクを高めます。
主な症状

早期の直腸がんはほとんど症状がありません。進行すると、便に血が混じる、排便回数の増加、便が細くなる、残便感、下腹部の痛みなどの症状が現れます。
出血がある場合でも「痔かな」と思って放置することが多いため、便に血が混じったら早めに検査を受けることが大切です。
診断方法
大腸内視鏡検査が最も重要です。直腸の内部を直接観察し、異常があれば組織を採取して病理検査を行います。
CTやMRI検査で、腫瘍の広がりやリンパ節転移、遠隔転移の有無を調べ、病期(ステージ)を判定します。
また、血液検査で腫瘍マーカー(CEA、CA19-9)を測定し、治療後の経過観察にも用います。
治療判断に使われる分類と治療方針
直腸がんの治療を決める際には、TNM分類を使います。
Tは腫瘍が直腸の壁のどこまで深く入り込んでいるか、Nはリンパ節転移の有無、Mは遠隔転移の有無を表します。この組み合わせでステージI〜IVに分けられます。
ステージIは、がんが粘膜や粘膜下層にとどまっている早期がんです。この段階では、内視鏡的切除(EMR・ESD)や、局所切除手術で根治できる場合があります。腫瘍が大きい場合は、腹腔鏡手術で直腸の一部を切除します。
ステージIIは、がんが筋層や外膜に達しているが、リンパ節転移のない段階です。手術(低位前方切除術や直腸切断術)が基本です。再発リスクが高い場合には、術後補助化学療法を行うこともあります。
ステージIIIは、がんがリンパ節に転移している段階です。手術に加えて抗がん剤治療を組み合わせます。
また、術前に放射線治療や化学放射線療法を行ってがんを縮小させ、再発を減らす方法も一般的です。
ステージIVは、すでに遠くの臓器(肝臓・肺など)に転移している段階です。この場合は根治は難しく、全身化学療法(FOLFOX、FOLFIRIなど)や分子標的薬(ベバシズマブ、セツキシマブなど)を用いた治療が中心です。
近年では、免疫チェックポイント阻害薬(ニボルマブなど)が使われるケースもあります。
予防・早期発見

食物繊維を多くとり、野菜や果物中心の食生活にすること、禁煙・節酒、適度な運動が予防につながります。
また、便潜血検査で陽性が出たら、必ず大腸内視鏡検査を受けることが大切です。
40歳を過ぎたら定期的な検診を受けることで、早期発見・早期治療が可能になります。
参考文献
- 日本大腸癌研究会『大腸癌治療ガイドライン 2023年版』
- 国立がん研究センター がん情報サービス: https://ganjoho.jp
- NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines®): Colon and Rectal Cancer, Version 2024
- American Cancer Society: Colorectal Cancer Guide 2023



















