膀胱とは
膀胱(ぼうこう)は、腎臓で作られた尿を一時的にため、体外に排出するための臓器です。骨盤の中央、恥骨のすぐ後ろに位置し、風船のように伸び縮みします。膀胱の内側は「移行上皮」という細胞で覆われており、尿の刺激に強い構造になっています。
膀胱がんとは
膀胱の内側の細胞(移行上皮)ががん化して増える病気です。日本では年間約2万人が新たに診断され、男性が女性の約3倍多く発症します。
膀胱がんは大きく「表在性(浅い)膀胱がん」と「浸潤性(深い)膀胱がん」に分かれ、前者は再発しやすいものの比較的予後が良く、後者は進行が早く治療も複雑になります。
主な原因・リスク
最も大きなリスク因子は喫煙です。タバコに含まれる発がん物質が尿に混ざり、膀胱粘膜を長期間刺激することで発症リスクが高まります。
また、職業的に化学物質(染料・ゴム・皮革関連など)を扱う人もリスクが上がります。慢性的な膀胱炎や結石、シクロホスファミドなどの薬剤使用歴も関連します。
主な症状

初期にはほとんど症状がありませんが、最も多いのは血尿(痛みのない血尿)です。肉眼でわかるほど尿が赤くなることもあります。
進行すると、排尿時の痛み、頻尿、残尿感、尿の勢いの低下などが現れます。進行がんでは骨盤の痛みや腰痛、体重減少を伴うこともあります。
診断方法
尿検査(尿細胞診)で異常な細胞の有無を調べ、膀胱鏡で膀胱内を直接観察します。腫瘍が見つかった場合は、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-BT)で組織を採取し、病理検査で確定診断します。
また、CTやMRI、超音波検査で腫瘍の深さや転移の有無を確認します。
治療判断に使われる分類と治療方針
膀胱がんの治療を決める際には、TNM分類を使います。
Tは腫瘍が膀胱の壁のどこまで深く入り込んでいるか、Nはリンパ節転移、Mは遠隔転移の有無を表します。この組み合わせでステージI〜IVに分けられます。
ステージIは、がんが膀胱の粘膜や粘膜下層にとどまっている早期がんです。この段階では、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-BT)で腫瘍を削り取る治療を行います。再発を防ぐために、手術後に膀胱内に抗がん剤(マイトマイシンCなど)やBCG(結核菌の弱毒化ワクチン)を注入することがあります。
ステージIIは、がんが膀胱の筋層に達している段階です。この場合は、膀胱全摘術が標準治療です。必要に応じてリンパ節も切除します。手術後は、尿を体外に出すための新しい通路(尿路変向術)を作ります。全摘を避けたい場合は、放射線治療と抗がん剤を併用する「膀胱温存療法」も選択肢となります。
ステージIIIは、がんが膀胱の外側(脂肪組織など)に広がり、周囲臓器(子宮・前立腺など)に及んでいる段階です。この場合も、手術による膀胱全摘に加えて、術前または術後に抗がん剤治療を行います。代表的な薬剤はシスプラチンを含む多剤併用療法(GC療法など)です。体力や腎機能の状態に応じて治療内容を調整します。
ステージIVになると、がんが遠くの臓器(肺・骨・肝臓など)に転移している段階です。この場合は薬物療法が中心になります。
標準治療は、シスプラチン系抗がん剤による化学療法で、最近では免疫チェックポイント阻害薬(ペムブロリズマブ、アテゾリズマブなど)も用いられています。がんの進行を抑え、症状を和らげながら生活の質を保つことを目指します。
予防・早期発見

喫煙を控えることが最も重要です。また、職業上化学物質に触れる方は防護対策を徹底しましょう。
尿に血が混じったり、排尿に異常を感じた場合は、早めの受診が大切です。膀胱がんは早期に見つければ、再発を防ぎながら長期生存が期待できます。
参考文献
- 日本泌尿器科学会『膀胱癌診療ガイドライン 2023年版』
- 国立がん研究センター がん情報サービス: https://ganjoho.jp
- NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines®): Bladder Cancer, Version 2024
- American Cancer Society: Bladder Cancer Guide 2023



















