子宮頸部とは
子宮頸部(しきゅうけいぶ)は、子宮の下部にあたる部分で、腟と子宮をつなぐ細い管状の構造をしています。表面は「扁平上皮」、奥は「円柱上皮」という細胞で覆われており、この2つが交わる部分(扁平円柱上皮接合部)は細胞の変化が起こりやすい場所です。子宮頸がんの多くはこの接合部から発生します。
子宮頸がんとは
子宮頸がんは、子宮頸部の細胞が長い年月をかけて異常化し、がんになる病気です。日本では年間約1万人が新たに診断され、20〜40歳代の比較的若い女性に多く見られます。
がんの進行は比較的ゆっくりで、前がん病変の段階で発見・治療すればほとんどが完治しますが、進行すると周囲の臓器(膀胱・直腸など)に広がることもあります。
主な原因・リスク
最大の原因はヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの持続感染です。性交渉を通じて感染し、多くは自然に排除されますが、一部の型(特に16型・18型など)は長期間感染が続くとがん化のリスクが高まります。
そのほか、喫煙、免疫力の低下、長期の経口避妊薬の使用、多数の性交経験やパートナーの多い方などもリスク要因とされています。
主な症状

初期にはほとんど症状がありません。進行すると、不正出血(生理以外の出血)、性交時の出血、月経とは関係のない下腹部痛、悪臭を伴うおりものの増加などが見られます。こうした症状が出る頃にはがんが進んでいることが多いため、定期的な検診がとても大切です。
診断方法
まずは子宮頸がん検診(細胞診)で異常の有無を調べます。異常が見つかった場合は、HPV検査やコルポスコピー(拡大鏡による観察)、組織を採取して病理検査を行い、確定診断を行います。
がんと診断された場合には、MRIやCT、PETなどの画像検査で広がりや転移の有無を調べ、病期(ステージ)を判定します。
治療判断に使われる分類と治療方針
子宮頸がんの治療を決める際には、TNM分類を使います。
Tは腫瘍が子宮頸部のどこまで広がっているか、Nはリンパ節に転移があるか、Mは遠くの臓器への転移があるかを表します。この組み合わせでステージI〜IVに分けられます。
ステージIは、がんが子宮頸部の中にとどまっている早期がんです。この段階では、手術(子宮全摘または広汎子宮全摘)が基本です。将来の妊娠を希望する若い方では、条件を満たせば子宮を温存する円錐切除術や広汎子宮頸部摘出術を選択できることもあります。
ステージIIは、がんが子宮を超えて広がっているものの、骨盤壁や膣の下部までは達していない段階です。この場合は、放射線治療と抗がん剤(シスプラチンなど)を併用する化学放射線療法(CCRT)が標準治療となります。症例によっては手術を併用することもあります。
ステージIIIは、がんがさらに進行し、骨盤壁や膣の下部にまで広がっている、あるいはリンパ節転移を伴う段階です。化学放射線療法が中心で、腫瘍の縮小を目指して治療を行います。腎機能障害を伴う場合には、放射線単独治療や抗がん剤の調整が検討されます。
ステージIVになると、がんが膀胱や直腸、あるいは遠くの臓器に転移している段階です。根治手術は難しく、抗がん剤治療や分子標的薬(ベバシズマブなど)を中心に行い、症状を和らげながら生活の質を保つことを目指します。近年では免疫チェックポイント阻害薬などの新しい薬も使われています。
予防・早期発見

子宮頸がんは「予防できるがん」です。最大の予防法はHPVワクチンの接種で、初回性交前の10代前半での接種が最も効果的です。また、20歳以上の女性は2年に1回の子宮頸がん検診(細胞診)を受けることが推奨されています。ワクチンと検診を併用することで、発症を大幅に減らすことが可能です。
喫煙を控え、免疫力を保つ生活も予防に役立ちます。
参考文献
- 日本婦人科腫瘍学会『子宮頸癌治療ガイドライン 2023年版』
- 国立がん研究センター がん情報サービス: https://ganjoho.jp
- NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines®): Cervical Cancer, Version 2024
- World Health Organization: Cervical Cancer Prevention and Control 2023



















