食道とは
食道(しょくどう)は、のど(咽頭)から胃まで食べ物を運ぶ約25cmの管状の臓器です。胸の中央を通り、横隔膜を貫いて胃につながっています。食道の壁は粘膜・筋肉などの層でできており、蠕動(ぜんどう)運動によって食べ物を胃に送り込みます。
食道がんとは
食道がんは、食道の内側を覆う粘膜の細胞ががん化して発生する病気です。日本では年間約2万5千人が新たに診断され、男性に多く見られます。
主なタイプは「扁平上皮がん(約90%)」で、これは喫煙や飲酒と深く関係しています。欧米では「腺がん」が多く、これは胃食道逆流症(GERD)や肥満と関連します。
食道がんは進行が早く、周囲臓器(気管・肺・大動脈など)に広がりやすいのが特徴です。
主な原因・リスク
最も大きなリスク因子は、喫煙と飲酒です。特に両方の習慣がある場合、リスクは相乗的に高まります。
また、慢性的な食道炎、熱い飲み物の摂取、野菜不足、食道乳頭腫ウイルス(HPV)感染、遺伝的要因なども関係します。
アルコールを分解しにくい体質(ALDH2遺伝子の不活性型)を持つ人は、特に注意が必要です。
主な症状

早期の食道がんはほとんど症状がありません。進行すると、食べ物がつかえる感じ(嚥下障害)が現れ、さらに進むと食事のたびに胸の痛みや違和感、体重減少、声のかすれ、咳、吐血などがみられます。
また、がんが気管や肺に広がると、呼吸が苦しくなることもあります。こうした症状が続く場合は、早めの受診が大切です。
診断方法
食道内視鏡検査が最も重要です。がんの範囲や深さを観察し、組織を採取して病理診断を行います。
さらに、CT、MRI、超音波内視鏡(EUS)、PET-CTなどで広がりや転移の有無を調べます。
これらの結果をもとに、TNM分類を用いて病期(ステージ)を決定します。
治療判断に使われる分類と治療方針
食道がんの治療を決める際には、TNM分類を使います。
Tは腫瘍が食道の壁のどこまで深く入り込んでいるか、Nはリンパ節転移の有無、Mは遠隔転移の有無を表します。この組み合わせでステージI〜IVに分けられます。
ステージIは、がんが食道の粘膜または粘膜下層にとどまっている早期がんです。この段階では、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)などでがんを切除できる場合があります。病変が広い場合や深部に及ぶ場合は、外科手術による食道切除が行われます。
ステージIIは、がんが筋層まで進展しているか、または近くのリンパ節に転移がある段階です。この場合、手術(胸腔鏡下食道切除術など)が基本ですが、術前に抗がん剤治療(ネオアジュバント療法)を行ってから手術することが一般的です。術後には再発予防のための補助化学療法を行うこともあります。
ステージIIIは、がんが食道の外側や周囲臓器(肺・大動脈・気管など)に広がっている段階です。この場合は、手術だけでなく化学放射線療法(CCRT)が中心になります。手術が難しい場合には、放射線と抗がん剤を併用して根治を目指します。
ステージIVは、がんが遠くの臓器(肝臓・肺・骨など)に転移している段階です。この場合は根治は難しく、抗がん剤治療や免疫療法(ニボルマブ、ペムブロリズマブなど)による全身治療が中心になります。症状を和らげながら、生活の質を保つことを目標とします。
予防・早期発見

禁煙・節酒が最も重要な予防法です。また、熱い飲み物の摂取を控え、野菜や果物を多くとる食生活を心がけましょう。
食道炎や胃食道逆流症がある場合は、早めに治療することも大切です。
早期発見のためには、定期的な内視鏡検査が非常に有効です。特に飲酒・喫煙習慣のある方は定期検査をおすすめします。
参考文献
- 日本食道学会『食道癌診療ガイドライン 2022年版』
- 国立がん研究センター がん情報サービス: https://ganjoho.jp
- NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines®): Esophageal and Esophagogastric Junction Cancers, Version 2024
- American Cancer Society: Esophageal Cancer Guide 2023



















