前立腺とは
前立腺(ぜんりつせん)は、男性にのみある臓器で、膀胱の下、尿道を取り囲むように位置しています。精液の一部をつくり、精子の活動を助ける役割を持ちます。加齢とともに肥大しやすく、排尿トラブルの原因になることもあります。
前立腺がんとは
前立腺の細胞が異常に増えて腫瘍をつくる病気です。日本では男性のがんの中で最も多く、年間約9万人が新たに診断されています。高齢男性に多く、進行がゆっくりなタイプが多いですが、中には早く進行するものもあります。PSA(前立腺特異抗原)検査の普及により、早期に発見される例が増えています。
主な原因・リスク
はっきりとした原因はわかっていませんが、加齢、男性ホルモン(テストステロン)、遺伝、食生活(動物性脂肪の多い食事)などが関係すると考えられています。
父親や兄弟に前立腺がんの既往がある場合、リスクは約2倍に上がります。また、肥満や運動不足も発症に関与しているとされます。
主な症状

早期の前立腺がんはほとんど症状がありません。進行すると、排尿の勢いが弱くなる、頻尿、残尿感、排尿時の痛み、血尿などが現れます。さらに進行すると、骨(特に腰や背骨)に転移して痛みが出ることもあります。これらの症状は前立腺肥大症と似ているため、早めの検査が重要です。
診断方法
血液検査でPSA値を測定し、異常があれば経直腸的超音波検査やMRIで前立腺の状態を確認します。腫瘍が疑われる場合には、前立腺針生検で組織を採取し、病理診断を行います。
診断後は、CTや骨シンチグラフィなどで転移の有無を調べ、病期(ステージ)を判定します。
治療判断に使われる分類と治療方針
前立腺がんの治療を決める際には、TNM分類を使います。
Tは腫瘍が前立腺内でどこまで広がっているか、Nはリンパ節転移の有無、Mは遠隔転移の有無を表します。この組み合わせでステージI〜IVに分けられます。
ステージIは、がんが前立腺の中にとどまっている早期がんです。PSA値が低く、悪性度(グリソンスコア)が低い場合は「経過観察(PSA監視療法)」を選ぶこともあります。手術(前立腺全摘除術)や放射線治療によって完治が期待できます。
ステージIIは、がんが前立腺の中に広がっているが、被膜の外までは出ていない段階です。この場合も手術または放射線治療が中心で、がんの性質に応じてホルモン療法を併用することがあります。近年は体にやさしいロボット支援手術(ダヴィンチ手術)も広く行われています。
ステージIIIは、がんが前立腺の外側(精嚢や周囲組織)まで広がっている段階です。この場合は、放射線治療とホルモン療法を併用することが標準的です。手術での摘出を行う場合でも、再発防止のために追加治療が必要になることがあります。
ステージIVになると、がんがリンパ節や骨、他の臓器(肺・肝臓など)に転移している段階です。この場合は、手術よりも薬物療法が中心になります。男性ホルモンの働きを抑えるホルモン療法(去勢療法)を基本に、抗がん剤(ドセタキセルなど)や新しいホルモン薬(エンザルタミド、アビラテロンなど)、免疫療法を組み合わせて行います。近年は治療薬の進歩により、長期生存が十分に期待できるようになっています。
予防・早期発見

前立腺がんは進行が遅い場合が多いため、早期発見が重要です。50歳以上の男性(家族に前立腺がんのある方は40歳以上)は、定期的にPSA検査を受けることが推奨されます。
また、動物性脂肪を控え、野菜や大豆製品を多くとるバランスの取れた食生活、適度な運動、禁煙を心がけることも予防につながります。
参考文献
- 日本泌尿器科学会『前立腺癌診療ガイドライン 2023年版』
- 国立がん研究センター がん情報サービス: https://ganjoho.jp
- NNCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines®): Prostate Cancer, Version 2024
- American Cancer Society: Prostate Cancer Guide 2023



















