血液とは
血液は、体の中を循環して酸素や栄養を運び、老廃物を取り除く重要な役割を持つ組織です。
赤血球、白血球、血小板という3つの主要な細胞から成り立ち、それぞれが酸素運搬・免疫防御・止血といった働きを担っています。
これらの血液細胞は、すべて骨の中にある「骨髄」でつくられます。
白血病とは
白血病は、骨髄でつくられる白血球のもとになる細胞が異常に増え、正常な血液細胞を圧迫してしまう病気です。
がんの一種であり、「血液のがん」と呼ばれます。
進行の速さによって急性白血病と慢性白血病に分けられ、さらに細胞の種類によってリンパ性と骨髄性に分類されます。
つまり、白血病は大きく「急性リンパ性白血病(ALL)」「急性骨髄性白血病(AML)」「慢性リンパ性白血病(CLL)」「慢性骨髄性白血病(CML)」の4つに分けられます。
主な原因・リスク
多くの場合、原因は明確ではありませんが、次のような要因が関係すると考えられています。
- 強い放射線や化学物質(ベンゼンなど)への曝露
- 抗がん剤治療や放射線治療の後遺症(治療関連白血病)
- ダウン症など一部の遺伝的要因
- ウイルス感染(HTLV-1など)
ただし、ほとんどの患者さんは特別な原因がなく発症します。
主な症状

白血病は、正常な血液細胞が減少することでさまざまな症状を引き起こします。
- 赤血球の減少:貧血、倦怠感、息切れ、動悸
- 白血球の減少:発熱、感染症の繰り返し
- 血小板の減少:あざができやすい、歯ぐきや鼻からの出血
また、リンパ節や肝臓・脾臓が腫れたり、骨の痛みを感じることもあります。
急性白血病ではこれらの症状が急速に進行し、数週間で悪化することがあります。
診断方法
血液検査で白血球の数や形の異常を確認し、疑いがあれば骨髄穿刺検査(骨髄液を採取する検査)を行います。
顕微鏡で細胞の形を観察し、染色体検査や遺伝子解析で異常を特定します。
急性か慢性か、リンパ性か骨髄性かによって治療法が大きく異なるため、正確な分類が非常に重要です。
治療判断に使われる分類と治療方針
白血病では、固形がんのようなTNM分類やステージ分類は用いません。
代わりに、病型(急性・慢性、リンパ性・骨髄性)や染色体異常、遺伝子変異の有無などに基づいて治療方針を決定します。
急性白血病では、治療の中心は抗がん剤治療(化学療法)です。
まず「寛解導入療法」で白血病細胞を減らし、続いて「地固め療法」で残ったがん細胞を根絶します。
再発リスクが高い場合は、造血幹細胞移植が検討されます。
慢性骨髄性白血病(CML)では、分子標的薬(イマチニブなど)が非常に有効で、服薬により長期間安定した経過を保てるようになっています。
慢性リンパ性白血病(CLL)では、進行がゆるやかなため、症状が出るまでは経過観察とすることもあります。
予防・早期発見

白血病を完全に防ぐ方法はありませんが、定期的な健康診断で血液検査を受けることで早期発見につながることがあります。
原因不明の倦怠感や発熱、出血傾向などが続く場合は早めに血液内科を受診しましょう。
治療法の進歩により、白血病はかつてよりも治療成績が大きく改善しており、長期生存が可能な病気となっています。
参考文献
- 日本血液学会『造血器腫瘍診療ガイドライン 2023年版』
- 国立がん研究センター がん情報サービス: https://ganjoho.jp
- NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines®): Acute and Chronic Leukemias, Version 2024
- American Cancer Society: Leukemia Overview 2023