卵巣とは
卵巣(らんそう)は、子宮の両側に1つずつある直径3〜4cmほどの臓器で、卵子を育てて排卵する「生殖機能」と、女性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)を分泌する「内分泌機能」を担っています。
卵巣は骨盤の奥に位置しているため、がんができても初期には症状が出にくいのが特徴です。
卵巣がんとは
卵巣がんは、卵巣の表面や内部を覆う細胞が異常に増えて発生する悪性腫瘍です。日本では年間約1万人が新たに診断され、死亡率の高い婦人科がんの一つです。
卵巣がんは進行がんで見つかることが多く、早期発見が難しいがんとして知られています。
組織型には、漿液性腺がん、類内膜腺がん、明細胞腺がん、粘液性腺がんなどがあり、それぞれ性質や治療反応性が異なります。
主な原因・リスク
はっきりとした原因は分かっていませんが、発症リスクを高める要因として以下が知られています。
出産・授乳経験がない、初潮が早い・閉経が遅い(排卵回数が多い)、不妊治療歴、肥満、家族に卵巣がんや乳がんのある方(BRCA1/2遺伝子変異)などです。
一方で、妊娠・出産・授乳・経口避妊薬(ピル)の使用は発症リスクを下げるとされています。
主な症状

早期の卵巣がんはほとんど症状がありません。進行すると、下腹部の張りや膨満感、腹痛、頻尿、食欲不振、便秘、体重増加(腹水の貯留)などが現れます。
腫瘍が大きくなると下腹部のしこりとして触れることもあります。症状があっても婦人科以外を受診して発見が遅れることがあるため、違和感を感じたら早めの受診が大切です。
診断方法
経腟超音波検査で卵巣の大きさや形、内部構造を調べます。腫瘍が疑われる場合は、CT、MRI、PET-CTで広がりを確認します。
血液検査では腫瘍マーカー(CA125、HE4など)を測定します。これらの検査結果をもとに、TNM分類やFIGO分類を用いて病期(ステージ)を決定します。
最終的な診断は、手術や生検で採取した組織の病理検査によって行われます。
治療判断に使われる分類と治療方針
卵巣がんの治療を決める際には、TNM分類と国際婦人科連合(FIGO)の進行期分類を用います。
Tは腫瘍が卵巣内にとどまっているか、Nはリンパ節転移の有無、Mは遠隔転移の有無を表します。この組み合わせでステージI〜IVに分けられます。
ステージIは、がんが卵巣内に限局している早期の段階です。手術(子宮・卵巣・卵管の摘出、リンパ節郭清、大網切除)が基本治療です。術後には再発を防ぐために補助化学療法(カルボプラチン+パクリタキセルなど)を行う場合があります。
ステージIIは、がんが骨盤内の他臓器(子宮・卵管など)に広がっている段階です。手術に加え、術後化学療法を行います。腫瘍の残存を最小限にする「腫瘍減量手術」が重要です。
ステージIIIは、がんが骨盤外(腹膜やリンパ節など)に広がっている段階です。まず化学療法を行い、がんが縮小した後に手術を行う「術前化学療法+ interval debulking surgery(IDS)」が行われることもあります。再発予防のため、分子標的薬(ベバシズマブなど)やPARP阻害薬(オラパリブなど)が使われることがあります。
ステージIVは、がんが遠隔臓器(肝臓・肺・胸膜など)に転移している段階です。この場合は根治が難しく、全身化学療法が中心です。症状緩和を目的とした治療(腹水除去や支持療法)も並行して行われます。
予防・早期発見

卵巣がんの確実な予防法はありませんが、ピルの使用や出産・授乳がリスク低下につながります。
家族に卵巣がんや乳がんがある場合は、遺伝カウンセリングやBRCA遺伝子検査を受けることが推奨されます。
早期発見のためには、定期的な婦人科検診(超音波検査・腫瘍マーカー測定)を受けることが大切です。
参考文献
- 日本婦人科腫瘍学会『卵巣腫瘍治療ガイドライン 2023年版』
- 国立がん研究センター がん情報サービス: https://ganjoho.jp
- NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines®): Ovarian Cancer, Version 2024
- American Cancer Society: Ovarian Cancer Guide 2023



















