軟部組織とは
軟部組織(なんぶそしき)は、骨や臓器を包み支える「結合組織」の総称で、筋肉、脂肪、神経、血管、腱、靭帯などが含まれます。これらは全身に分布し、体の運動や保護、エネルギーの貯蔵などを担っています。
軟部肉腫とは
軟部肉腫(なんぶにくしゅ)は、これらの軟部組織に発生する悪性腫瘍です。発生頻度は比較的まれで、日本では年間約2,000〜3,000人が新たに診断されています。
体のどこにでも発生しますが、特に太ももや腕などの四肢、体幹、後腹膜などに多く見られます。
組織学的には多様で、代表的なタイプとして以下があります。
– 脂肪肉腫(liposarcoma)
– 平滑筋肉腫(leiomyosarcoma)
– 未分化多形肉腫(旧MFH)
– 滑膜肉腫(synovial sarcoma)
– 横紋筋肉腫(rhabdomyosarcoma)
– 血管肉腫(angiosarcoma) など
主な原因・リスク
多くの症例で明確な原因は不明です。まれに放射線治療後の組織や、外傷・慢性炎症の部位から発生することがあります。
また、一部の症例では遺伝的要因(Li-Fraumeni症候群、神経線維腫症など)や特定の遺伝子異常(例:t(X;18)転座)が関与しています。
主な症状

初期には痛みのないしこりとして気づかれることが多く、症状が少ないのが特徴です。進行すると以下のような症状が見られます。
– しこりが急速に大きくなる
– 痛みや圧迫感
– 神経や血管を圧迫して手足のしびれ、むくみが出る
– 皮膚の発赤や熱感
悪性の場合、短期間で腫瘍が拡大することが多く、早期の受診が重要です。
診断方法
MRI検査で腫瘍の大きさ・深さ・境界を確認し、CTで骨や肺転移の有無を調べます。
確定診断には生検(針生検または切開生検)を行い、病理検査で腫瘍の種類と悪性度(分化度・核分裂像・壊死の程度)を評価します。
病期はTNM分類に基づき、腫瘍の大きさ・リンパ節転移・遠隔転移の有無からステージを決定します。
治療判断に使われる分類と治療方針
軟部肉腫の治療を決める際には、TNM分類を使います。Tは腫瘍の大きさや深さ、Nはリンパ節転移の有無、Mは遠隔転移の有無を表します。この組み合わせでステージI〜IVに分けられます。
ステージIは、腫瘍が小さく、悪性度の低い段階です。手術による広範囲切除が基本で、周囲の正常組織を含めて腫瘍を取り除きます。切除できれば治癒が期待できます。
ステージIIは、腫瘍がやや大きいか、悪性度が中等度の段階です。手術が主体ですが、再発リスクを抑えるために放射線治療を併用することがあります。
ステージIIIは、高悪性度または大きな腫瘍で、局所再発や転移のリスクが高い段階です。手術+放射線+化学療法(ドキソルビシン、イホスファミドなど)の併用治療が行われます。
ステージIVは、肺や他臓器への遠隔転移がある段階です。この場合、根治は難しく、化学療法や分子標的薬(パゾパニブ、トラベクテジンなど)による全身治療が中心となります。症状緩和と生活の質の維持を目的とした治療も重要です。
予防・早期発見

特有の予防法はありませんが、「急速に大きくなるしこり」「3cm以上の深部腫瘤」「痛みを伴う腫れ」は注意が必要です。
数週間で変化するしこりがある場合は、整形外科または腫瘍専門医を早めに受診しましょう。MRIや生検による正確な診断が早期発見と予後改善につながります。
参考文献
- 日本整形外科学会『骨・軟部腫瘍診療ガイドライン 2023年版』
- 国立がん研究センター がん情報サービス: https://ganjoho.jp
- NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines®): Soft Tissue Sarcoma, Version 2024
- American Cancer Society: Soft Tissue Sarcoma Facts & Figures 2023



















