精巣とは
精巣(せいそう)は、陰嚢(いんのう)の中に左右1つずつある男性の生殖器で、精子をつくり、男性ホルモン(テストステロン)を分泌する重要な臓器です。
思春期以降の生殖や性機能に関わるほか、全身の代謝や筋肉量にも影響を与えます。
精巣がんとは
精巣がんは、精巣内の精子をつくる細胞(胚細胞)ががん化して発生する病気です。
比較的まれながんですが、20〜40歳代の若い男性に多く見られるのが特徴です。
日本では年間約1,000人前後が新たに診断されます。
精巣がんは「セミノーマ(seminoma)」と「非セミノーマ(non-seminoma)」の2つに大別され、治療法や進行の仕方がやや異なります。
主な原因・リスク
精巣がんのはっきりとした原因はまだ分かっていませんが、いくつかの要因が関係すると考えられています。
代表的なのは「停留精巣(精巣が陰嚢の中に降りてこない状態)」で、出生後に手術で下ろしても、将来的にがんのリスクがやや高いまま残ることが知られています。
そのほか、家族に精巣がんの経験者がいる場合や、HIV感染などで免疫力が低下している場合にも発症しやすいとされています。
欧米人や高身長の男性に多い傾向がありますが、生活習慣との関係はあまり明確ではありません。
主な症状

初期の精巣がんは痛みがないことが多く、陰嚢の中の「しこり」や腫れで気づくことが多いです。
精巣の硬さが増したり、片側だけ重く感じたりすることもあります。
進行すると、腰や背中の痛み、息苦しさなどの症状が出ることもありますが、これらは転移によるものです。
痛みがないからと放置せず、違和感を感じたら早めに泌尿器科を受診することが大切です。
診断方法
まず触診や超音波検査で精巣内のしこりを確認します。
血液検査では、腫瘍マーカー(AFP、hCG、LDHなど)を測定し、がんのタイプや進行度の判断に役立てます。
CT検査やMRIでリンパ節や肺などへの転移の有無を調べ、診断を確定します。
がんが疑われる場合、まず高位精巣摘除術(精巣の摘出手術)を行い、病理検査で確定診断します。
治療判断に使われる分類と治療方針
精巣がんの治療を決める際には、TNM分類という国際的な基準を用いて病期(ステージI〜III)を判断します。
Tは腫瘍がどこまで広がっているか、Nはリンパ節への転移、Mは遠くの臓器への転移を意味します。
この3つの情報を組み合わせて、がんの進行度を詳しく評価します。
ステージIは、がんが精巣内にとどまっている早期の段階です。
この場合、高位精巣摘除術のみで治癒が期待できます。
再発リスクが高い場合は、追加で放射線治療(セミノーマの場合)または抗がん剤治療(非セミノーマの場合)を行うことがあります。
ステージIIは、後腹膜リンパ節に転移がある段階です。
治療は抗がん剤治療(BEP療法:ブレオマイシン、エトポシド、シスプラチン)が中心で、腫瘍の残存があれば手術で摘出します。
セミノーマでは放射線治療を組み合わせることもあります。
ステージIIIは、肺や肝臓など遠隔転移を伴う段階です。
多剤併用化学療法(BEP療法、VIP療法など)が行われ、治療効果が高い場合も多く、寛解(治癒)が十分に期待できます。
再発例や治療抵抗性の場合は、救済化学療法や自家造血幹細胞移植が検討されます。
予防・早期発見

明確な予防法はありませんが、自己触診による早期発見がとても大切です。
月に1回程度、入浴中などリラックスした状態で両手で精巣を触り、しこりや左右差がないか確認しましょう。
早期に発見し治療すれば、5年生存率は95%以上と非常に良好です。
参考文献
- 日本泌尿器科学会『精巣腫瘍診療ガイドライン 2023年版』
- 国立がん研究センター がん情報サービス: https://ganjoho.jp
- NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines®): Testicular Cancer, Version 2024
- American Cancer Society: Testicular Cancer 2023



















