絨毛とは
絨毛(じゅうもう)は、妊娠の初期に胎盤をつくる細胞の一部で、胎児と母体の間で酸素や栄養をやりとりする重要な役割を担っています。正常な妊娠では、出産後に胎盤が排出されて役目を終えます。
絨毛がんとは
絨毛がんは、妊娠に関係する絨毛細胞が異常に増殖して発生する悪性腫瘍です。妊娠性絨毛性腫瘍(GTD:Gestational Trophoblastic Disease)の一つに分類されます。
流産、胞状奇胎、出産の後に発生することが多く、発症頻度はまれですが、進行が早い特徴があります。
一方で、抗がん剤が非常によく効くがんとして知られており、適切な治療により高い確率で治癒が期待できます。
主な原因・リスク
はっきりとした原因はわかっていませんが、絨毛細胞の異常増殖をきっかけにがん化すると考えられています。
特に胞状奇胎を経験した方では、約2〜3%の割合で絨毛がんに移行することが知られています。
また、35歳以上の高齢妊娠、流産や早産の既往、ホルモン環境の変化、まれに遺伝的な素因なども関係するとされています。
主な症状

早期の絨毛がんは自覚症状が乏しいこともありますが、多くは妊娠後の不正出血で気づかれます。
そのほか、以下のような症状が現れることがあります。
– 妊娠していないのに子宮が大きくなる
– 腹部の張りや痛み
– hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)値が高い状態が続く
– 肺転移による咳、息切れ、血痰
このような症状がある場合は、産婦人科での検査が必要です。
診断方法
診断の中心となるのは血中hCG値の測定です。妊娠で分泌されるホルモンですが、出産後も高値が続く場合は異常が疑われます。
超音波検査やMRI、CTなどで腫瘍の広がりや転移を調べ、必要に応じて病理検査を行います。
治療判断に使われる分類と治療方針
絨毛がんの治療を決める際には、FIGO(国際産婦人科連合)の分類およびWHOリスクスコアを用います。
Tは腫瘍が子宮内にとどまるか、Nは骨盤内リンパ節転移の有無、Mは遠隔転移(肺・肝・脳など)の有無を示します。
また、年齢・hCG値・転移の部位や個数などを加味してリスクスコアを算出し、低リスク群(スコア0〜6)と高リスク群(スコア7以上)に分類します。
これらを組み合わせて最適な治療法を決定します。
ステージIは、がんが子宮内に限局している段階です。通常は抗がん剤単独療法が基本で、メトトレキサートやアクチノマイシンDなどが使用されます。
多くの症例で完全寛解が得られますが、リスクスコアが高い場合には多剤併用療法(EMA/COなど)を行うこともあります。
ステージIIは、がんが骨盤内(卵巣や腟など)に広がっている段階です。通常は多剤併用化学療法(EMA/CO療法など)が行われ、転移巣も同時に治療されます。
ステージIIIは、肺に転移がある段階です。抗がん剤治療が中心で、多剤併用療法によって高い治療効果が得られます。肺転移が消失することも多く、治癒が期待できます。必要に応じて放射線治療を併用します。
ステージIVは、脳や肝臓などの遠隔臓器に転移している段階です。高リスク症例に分類され、多剤併用療法や放射線治療、外科的切除を組み合わせて治療を行います。現在では化学療法の進歩により、8〜9割の方が寛解に至っています。
予防・早期発見

予防法は確立していませんが、妊娠や流産、胞状奇胎の後には定期的なhCG測定を続けることが重要です。
特に胞状奇胎を経験した方は、治療後1年間ほどの経過観察が推奨されます。
不正出血や妊娠に似た症状がある場合は、早めに産婦人科を受診しましょう。
参考文献
- 日本産科婦人科学会『妊娠性絨毛性疾患診療ガイドライン 2023年版』
- 国立がん研究センター がん情報サービス: https://ganjoho.jp
- NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines®): Gestational Trophoblastic Neoplasia, Version 2024
- World Health Organization: Gestational Trophoblastic Disease 2023



















