皮膚とは
皮膚は、体を外界から守る最大の臓器で、表皮・真皮・皮下組織の3層から構成されています。紫外線や細菌などの外的刺激から体を守る「バリア機能」のほか、体温調節や感覚の伝達など、生命維持に欠かせない役割を果たしています。皮膚がんは、これらの皮膚を構成する細胞が異常に増えて腫瘍を形成する病気です。
皮膚がんとは
皮膚がんは、皮膚の表面やその付属器(毛包・汗腺など)に発生する悪性腫瘍の総称です。日本では年間約3万人が新たに診断されています。皮膚がんにはいくつかの種類があり、代表的なものに次の3つがあります。
– 基底細胞がん(BCC):最も多いタイプで、転移はまれですが局所的に深く広がる傾向があります。
– 有棘細胞がん(SCC):日光のあたる部位に多く発生し、進行するとリンパ節や遠隔転移を起こすことがあります。
– 悪性黒色腫(メラノーマ):メラニンをつくる細胞(メラノサイト)から発生し、極めて悪性度の高いがんです。
主な原因・リスク
皮膚がんの最大の原因は紫外線です。日焼けを繰り返すことで皮膚のDNAに損傷が蓄積し、がん化につながります。また、慢性的な炎症や外傷のあと、放射線照射後の皮膚、免疫抑制状態(臓器移植後など)も発症リスクとなります。悪性黒色腫では、色白肌やホクロの多さ、家族歴などの遺伝的要因も関係します。
主な症状

初期の皮膚がんは痛みがないことが多く、見た目の変化で気づかれることがほとんどです。
– 基底細胞がん:黒っぽく、真ん中がへこんだしこり。出血やかさぶたを伴うことがあります。
– 有棘細胞がん:硬いしこりや潰瘍ができ、出血を繰り返すことがあります。
– 悪性黒色腫:ホクロのように見えますが、形がいびつ、色が濃い、短期間で大きくなる、出血するといった特徴があります。
進行すると、リンパ節の腫れや倦怠感、呼吸苦などの全身症状が現れることもあります。
診断方法
皮膚の病変は視診やダーモスコピー(拡大鏡)で観察し、がんが疑われる場合には局所麻酔下で組織を採取して病理検査を行います。悪性黒色腫では、CTやPET-CTで転移の有無を調べます。腫瘍の深さ、リンパ節転移、遠隔転移の有無をもとに、TNM分類を用いて病期(ステージ)を判定します。
治療判断に使われる分類と治療方針
皮膚がんの治療を決める際には、TNM分類を使います。Tは腫瘍の大きさや深さ、Nはリンパ節転移の有無、Mは遠隔転移の有無を表します。この組み合わせでステージI〜IVに分けられます。
ステージIは、がんが皮膚内にとどまっている早期の段階です。この場合は外科的切除が基本で、周囲の正常皮膚を含めて十分な範囲を切除します。悪性黒色腫では腫瘍の厚みに応じて切除範囲を決定します。
ステージIIは、がんが真皮や皮下組織に達しているが、リンパ節転移がない段階です。広範囲切除に加えて、必要に応じてセンチネルリンパ節生検を行います。悪性黒色腫では術後に免疫療法などの補助治療が検討されます。
ステージIIIは、がんがリンパ節に転移している段階です。外科的にリンパ節郭清を行い、免疫チェックポイント阻害薬(ニボルマブ、ペムブロリズマブなど)や分子標的薬(BRAF阻害薬など)による薬物療法を組み合わせます。
ステージIVは、がんが遠隔臓器(肺・肝臓・脳など)に転移している段階です。手術による根治は難しく、免疫療法や分子標的薬による全身治療が中心となります。放射線治療は症状緩和や局所コントロールに用いられます。近年は免疫療法の進歩により、長期生存が期待できるケースも増えています。
予防・早期発見

皮膚がんの予防には紫外線対策が最も重要です。日焼け止めを使用し、帽子や長袖などで皮膚を保護することが大切です。ホクロやシミの形・色・大きさの変化に注意し、気になる場合は皮膚科を受診しましょう。悪性黒色腫では、家族歴のある方は特に注意が必要です。
参考文献
- 日本皮膚科学会『皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン 2023年版』
- 国立がん研究センター がん情報サービス: https://ganjoho.jp
- NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines®): Melanoma and Cutaneous Cancer, Version 2024
- American Cancer Society: Skin Cancer Facts & Figures 2023



















